東京高等裁判所 平成9年(ネ)5219号 判決 1999年4月20日
控訴人
吉近正之
外一七名
右控訴人一八名訴訟代理人弁護士
志村新
同
山本真一
同
田辺幸雄
右控訴人一八名訴訟復代理人弁護士
安原幸彦
同
小木和男
被控訴人
日本交通株式会社
右代表者代表取締役
川鍋達朗
被控訴人
第十日本交通株式会社
右代表者代表取締役
川鍋達朗
右被控訴人二名訴訟代理人弁護士
渡辺修
同
吉沢貞男
同
山西克彦
同
冨田武夫
同
伊藤昌毅
同
峰隆之
主文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴人清水満、同滝沢時男、同秋山幸雄、同大澤正春及び同川原武彦の当審で拡張した請求をいずれも棄却する。
三 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決中、控訴人らに関する部分を取り消す。
2 被控訴人日本交通株式会社は原判決別紙原告一覧表(二)の原告番号1ないし7、9ないし12及び14ないし17の各控訴人に対し、被控訴人第十日本交通株式会社は同表の原告番号18ないし20の各控訴人に対し、それぞれ同表の合計額欄記載の各金員並びに小計額欄及び一時金欄記載の各金員に対する各支払期日欄記載の期日の翌日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。(当審において、一部の控訴人らは請求を拡張し、一部の控訴人らは請求を減縮した。)
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
主文同旨
第二 事案の概要
本件事案の概要は、次の一のとおり訂正し、二のとおり控訴人らの当審における追加主張を付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」に記載のとおり(控訴人らの請求に関する部分に限る。)であるから、これを引用する。なお、以下において使用する略称は、原判決のそれと同一である。
一 原判決の訂正
1 原判決九頁五行目の「乙第一八号証の二、」を「甲第二〇ないし第二六号証、第二八ないし第三〇号証、第三二ないし第三八号証、乙第一八号証の一、二、」と改める。
2 原判決一〇頁六ないし七行目にかけての「乙第一三号証、」を「甲第二〇ないし第二六号証、第二八ないし第三〇号証、第三二ないし第三八号証、第四二号証の一ないし三、第四三号証、第四四号証、乙第一三号証、第一八号証の一、二、第二二号証、第二八ないし第三三号証、」と改める。
3 原判決別紙原告一覧表(二)の年休行使日欄の日付の記載を、佐々木亨につき「3.1.14」、浅利豪につき「12.14」、上沢正律につき「12.20」と、それぞれ改める。
二 当審における控訴人らの主張
1 年次休暇の時季指定権と権利濫用について
(一) 年次休暇制度と権利濫用の法理
労働者の時季指定権の行使により使用者に不都合が生じる場合には、使用者には一定の要件のもとで時季変更権という法的対抗手段が認められており、この両者が相まって年次有給休暇制度が成り立っているのであって、労基法は、この枠の中で権利行使の調整が行われるべきことを予定している。この枠外の権利濫用という一般法理で年次休暇権をさらに規制することは法の予定していないところであって、年次休暇権に対しては権利濫用法理を適用する前提を欠いている。
なお、時季指定権について権利濫用の法理が妥当しうるのは、使用者が時季変更権を行使する時間的余裕を与えないような時季指定権の行使に限られるとする説があるが、本件はこのような場合ではない。
(二) 特定日・特定時季についての年次休暇権行使
ナイト乗務指定日における特定の業務を拒否するための年次休暇権の行使は権利濫用に当たるとの原判決の考え方からすれば、特定勤務日・時季をあえて選んだ年次休暇権の行使は、これらの特定日・時季における業務を回避することとなるので許されないことになる。
しかし、例えば正月に休みたいとする時季指定も、月曜日であることを理由にした時季指定も、権利濫用であるとは誰も考えない。いずれの場合にも、使用者は、時季変更権を行使することが許されるにすぎない。
本件のナイト乗務指定日についての時季指定は、正月や月曜日についての時季指定と何ら変わるところはない。原判決のようにいうならば、すべての年次休暇の時季指定は指定日における業務に就きたくないがために行われるものであるから、結局のところ就労を拒否する目的で行ったとの非難を受けることになる。目的や動機を問題にして、その如何によって年次休暇権の行使を権利濫用とするのは、このような不合理を生むことになる。
(三) 年次休暇の自由利用の原則との関係
年次休暇の自由利用の原則には、休暇の取得目的や動機も含まれるから、反社会的な行動に出るために年次休暇権を行使しても、その時季指定が権利濫用になるわけではない。そして、反社会的な行動のための年次休暇の時季指定ならば有効であるが、ある業務を避けるための時季指定は許されないというのは、均衡がとれない。
また、特定業務回避のためかどうかを判定するためには、本件で被控訴人らが行ったように、年次休暇取得の動機や目的を問いたださなければならないことになる。しかし、年次休暇取得の目的を問いただすことが許されるのは、判例上も、時季変更権行使の要件が具備している上で、その行使を差し控えるかどうかを判断するために必要な場合のみに限られている。ところが、原判決のように年次休暇権の濫用法理を認めれば、判例にも反して、無制約に年次休暇の使用目的を問いただすことを認めざるを得なくなる。
いずれにしても、年次休暇の自由利用の原則を認める限り、どのようにして労働者を嫌な業務にも就かせるかは、年次休暇権の行使とは別の次元で使用者が解決すべきもので、年次休暇のレベルで解決するのは当を得ないことに帰する。
2 原判決が権利濫用の根拠とする理由について
原判決が、本件年休指定が権利濫用に当たるとして挙げる理由は、権利濫用の根拠にはなり得ないものである。
(一) 多数派との間の合意
原判決は、ナイト乗務の導入は多数組合との間に合意済みであることを指摘しているが、そのことゆえにナイト乗務の制度に合理性があるということはできない。また、年次休暇との関係で、ナイト乗務指定日を他の日とは異なり特別に扱うべきことともならない。
(二) 嫌な仕事を回避する風潮
原判決は、本件のような年次休暇を認めれば、嫌な仕事を回避する風潮を生み出すと判示している。
しかし、もともと年次休暇は業務に就くことから解放されることを本質とするものであり、そのなかには嫌な仕事からの解放が含まれる。年次休暇自由利用の原則は、嫌な仕事を避けるための年次休暇の利用を含むものであり、嫌な仕事を回避するために年次休暇を用いることは何ら否定されるべきことではない。
しかも、年次休暇を使うかどうかは本人の考え方次第であり、ある労働者のナイト乗務指定日の乗務を回避するための時季指定が認められたからといって、他の者の多くがナイト乗務回避のために年次休暇を使うとは限らない。そして、万一、多くの者がナイト乗務回避のために一斉に時季指定を行うという事態にいたったとしても、使用者としては、時季変更権を行使して所要の乗務員を確保することにより、業務の正常な運営を図ることができる。
(三) 他の乗務員の不公平感
原判決は、他の乗務員に対して不公平感を生じさせ、職場秩序を保つことができないとの指摘もしているが、年次休暇権の権利性を無視するものである。
原判決のいう不公平感とは、一部の者のみがナイト乗務を年次休暇で避けることができる場合に発生するものをいうのであろうが、控訴人らに限らず、他の従業員らも何らの制約なく、ナイト乗務指定日に年休の時季指定を行うことはできる。もし多数の者による時季指定が重なった場合には、使用者としては時季変更権の行使によって調整できる。
また、仮に他の労働者は嫌なナイト乗務に我慢して協力しているのに、控訴人らは協力しないではないか、という意味での不公平感をいうのであれば、それは権利濫用とは別次元の問題である。権利行使をするか控えるは当該労働者の自主性に委ねられることで、多くの者が権利行使を控えているなかで権利行使をすることが、権利濫用として否定されるべきいわれはない。
(四) 就労拒否者に対して有給で遇することの不合理性
原判決は、就労拒否者に対して有給で遇することは不合理性であるというが、年次有給休暇の制度の本質を否定するものである。
もともと年次有給休暇とは、業務に就くことを拒否してその日を自由な使用に委ねつつ、これを有給で遇することを本質とするものであり、就労拒否者に対して有給で処遇することが不合理であるという論理は、年次有給休暇制度そのものを不合理であるというに等しいものである。
(五) 年次有給休暇制度の趣旨
原判決は、特定業務への嫌悪から就労拒否のために年次休暇権を行使することは、年次有給休暇制度の趣旨に反すると述べる。
しかし、津田沼電車区事件最高裁判決の観点からは、年次休暇権行使が特定業務を回避する目的を持っていたとしても、「事業場における業務を運営するための正常な勤務体制」の枠内のものであるからには、何ら年次有給休暇の制度の趣旨に反するものではない。
あるいは、原判決は、年次休暇制度の趣旨を、狭い意味での「心身の休息」のためと理解し、この趣旨に反するがゆえに権利濫用に当たるとしているのかも知れないが、年次休暇制度における休暇の本質は、業務から離れることそれ自体にあるのであって、「心身の休息」というような狭い範囲に止まるものではない。
3 ナイト乗務制度について
原判決は、ナイト乗務は、深夜におけるタクシー不足の解消や労働時間の短縮という社会的、政策的要請に基づくものであり、これを実施する必要性は極めて高かったと述べているが、以下のとおり、誤りである。
(一) 深夜におけるタクシー不足の解消について
深夜におけるタクシー不足の解消のためには、夜間に運行している車両を従来よりも増やす必要があるが、そのために絶対的に必要なことはタクシー乗務員の確保である。そのための方策としては、現に保有している車両が十分に運行せずに休車が発生している場合には、休車となっている車両を運行するための乗務員の確保をまずもって行わなければならず、これだけでは不足し、さらに運行を増やすことが求められるのであれば、保有車両台数を増加するとともに、これを運行させるに足りる乗務員を確保することが求められる。
ところが、被控訴人らの場合には、ナイト乗務制度の導入以前から休車率が一定の割合で推移しており、もともと保有していた車両の運行すら完全にできていない状態であった。このような状態のもとで保有車両台数を増やせば、大幅な人員増を行うか、あるいは現有乗務員の乗務時間の大幅延長を行うのでなければ、休車率が増えることは当然である。それにもかかわらず、被控訴人らは増車分に見合うタクシー乗務員の増員すら行わなかった。
しかも、被控訴人らが導入したナイト乗務制度は、従来、昼夜一二乗務を要する月と一三乗務を要する月があったところ、従来の一三乗務を要する月のうちの一乗務がナイト乗務すなわち夜間のみの乗務とされる結果、その一乗務の昼間の運行がなくなるだけで、夜間の運行が従来の乗務制度と比較して増えることは予定されていない。したがって、ナイト乗務制度は、もともと夜間におけるタクシー不足の解消の要請には全く応えることができない制度であった。
そのうえ、ナイト乗務制度は、乗務員の増員は、増車台数分に見合う人数どころか、全く見込まないものであり、これでは必然的に休車率が従来よりも増える結果となり、深夜におけるタクシー不足の要請には何ら応えるものとはならない。
仮に夜間専用車両の増車が深夜におけるタクシー不足の解消のためのものであったとしても、ナイト乗務は一般的には歓迎されないものであったから、全乗務員を対象とするナイト乗務制度ではなく、希望者を募って希望者のみあるいは希望者を中心として運行することとするのが適切であった。ナイト乗務制度は、深夜におけるタクシー不足の解消の方策として、どうしても採用しなければならないようなものではなかった。
(二) 労働時間の短縮との関係について
ナイト乗務制度は、わずかではあるが所定労働時間の短縮を伴うものではあったが、時間短縮とはいっても乗務出番数それ自体は減らないために自由になる時間は名目ほどには増えない一方で、乗務員にとっては減収になるので、結局のところ労働条件改善効果は実際上ないに等しいものであった。これに加えてナイト乗務制度についての乗務員の評判は悪く、乗務員不足の解消にはならないものであった。このため、被控訴人らは、既に保有していた車両にすら休車が出ているなかで、これに加えて増車分の運行も現有乗務員で賄わなければならなくなった。
しかも、被控訴人らは、増車認可の要件とされていた現有乗務員数の計算に当たって、現にタクシー乗務に就いていた人数に加えて、配車担当者その他の実際には乗務しない者の人数を加算するなどして申請し、増車分の車両の運行を滞りなく運行することが不可能なまでに過剰な増車認可を得た。これは、保有車両台数さえ増やしておけば、当面は休車が増えるにしても、いずれ会社の利潤確保につながるという被控訴人らの利益第一主義の体質の現れにほかならない。
こうして、もともと現有人員では十分に運行できない過大な増車認可を得た結果、既に保有していた車両を含む車両全体を現有人員で何とか賄う便法として被控訴人らが導入したのがナイト乗務制度にほかならない。このように、もともと本件ナイト乗務制度は、時間短縮による労働条件改善効果によりタクシー乗務員不足を解消してタクシー需要に応えるどころか、利己的な立場から過剰であることを承知で増車認可を得たことに併せて導入したものであって、何ら社会的・政策的要請に基づくものなどではなかった。
(三) 被控訴人らがナイト乗務制度を導入した真の理由
夜間専用車両を完全に稼働させるためには、増車した車の数に見合ったタクシー乗務員の大幅な増加と確保が必要不可欠であったが、タクシー乗務員の大幅な増加は現実には極めて困難であった。
一方、被控訴人らは、乗務員について数字上の操作をして運輸当局から一二五台という大幅な数の暫定車両の認可を得ており、これを完全に稼働させないと、この暫定車両の認可を取り消されるおそれがあった。そこで、被控訴人らは、この増加した一二五台の車両がきちんと稼働しているという外形をとろうとしたが、これを実際に稼働させるためには乗務員がどうしても必要である。ところが、乗務員の大幅な不足という状況が恒常化しており、一挙に一二五台も増加した車両を稼働させる乗務員は被控訴人らには存在していなかった。
そこで、被控訴人らは、まず優先的に暫定車両を含む夜間専用車両を完全に稼働させるために、乗務員全員を対象にナイト乗務という特別の勤務シフトを導入したものである。その結果、確かに暫定車両は現実に稼働したが、その代わりに、増加した暫定車両の数だけ一般車両を休車させていたから、全体としての稼働数は少しも増えず、一般の乗客からすると、昼間の稼働車両の数が減っただけで、夜間の車の台数は何も変わっていない。
このように、ナイト乗務制度の実施は、原判決のいうような深夜におけるタクシー不足の解消という社会的、政策的要請によるものではなく、被控訴人らが獲得した一二五台の暫定増車にかかる車両を確保するためのものであって、被控訴人らの私的な利益追求のための手段以外の何物でもない。そうであるとすれば、ナイト乗務に関する控訴人らの年次休暇権の行使を権利の濫用として否定する根拠は全くない。
4 控訴人らの本件年次休暇権行使の目的について
控訴人らの時季指定が、ナイト業務を拒否することを目的として行われたとする原判決の認定は誤りである。
(一) ナイト乗務拒否目的の判定基準
原判決は、被控訴人らが、ナイト乗務拒否を目的とする休暇申請に対応するために、次のような方針をとったとする。
すなわち、「勤務編成表作成後のナイト乗務日の休暇申請については、必ず申請者に対して休暇取得の理由を尋ねること。申請にかかる休暇を例外的に認める場合を除き、休暇の理由を述べない者や明らかにナイト乗務を拒否する態度を示した者は欠勤として処理する。明らかにナイト乗務を拒否する態度か否かは、申請者が通常乗務を予定されている他の勤務日に当該ナイト乗務の分を振り替えることに応じるか否かで判断すること。」との方針である。
しかし、控訴人らは、年次休暇申請について理由を問うことは違法であるとの認識を持っていた。また、被控訴人らにおいては、従来から年次休暇申請に際して特に理由を尋ねられることはなかった。こうした実態のもとで、職制らが休暇の理由を問い、これに対して理由を具体的に述べない者をナイト乗務拒否とみなすことは、それ自体不合理である。
また、控訴人らとしては、その条件がナイト乗務の振り替えであるか否かにかかわらず、年次休暇に条件を付けること自体を不当と認識していたから、振り替えに応じるかどうかも、同様に、乗務拒否の意思の有無の判断の決め手とはならない。
このように、休暇闘争後に被控訴人らが決定した基準は、従来の職場慣行には全くない休暇の理由の問いただしや年次休暇取得についての引換え条件の導入であり、控訴人らには年次休暇権行使に対する不当な攻撃であると受け止められた。これに対する控訴人らの抗議や反発が生じるのは当然であり、このような基準によってナイト乗務拒否の目的を推認すること自体が誤りである。
(二) 控訴人らのナイト乗務の実績
控訴人らのうち多数の者は、他のナイト乗務指定日に指定されたナイト乗務を行っている。ナイト乗務拒否の意思を問題にする以上、このような事実を無視して良い理由はなく(控訴人らがナイト乗務を拒否する強固な意思を持っていたならば、他の勤務日にナイト乗務を行うことは極めて不自然である。)、この点を全く考慮していない前記被控訴人らの基準及び原判決の認定の不合理性は明らかである。
(三) 判定基準の恣意的な適用
年次休暇の可否を決定するに当たっては、各営業所の管理職らによって前記基準は厳格に適用されていない。
被控訴人ら提出の各営業所の職制名義の陳述書の記載を見ても、休暇理由の問いただしも、振り替えに応じるかどうかの確認も、全く行った形跡のないものが多数存在する。特に千住第三営業所、蒲田営業所及び目黒営業所について、その傾向が顕著である。
(四) 職制らの陳述書の信用性
被控訴人らの各営業所の職制が作成した陳述書と、「夜間日勤勤務指定日における休暇申請状況」(以下「申請状況」という。)とを個々に比較すると、後者の大部分にはごく簡単な記載しかなく、陳述書記載の休暇申請当時の様子との間に食い違いが見られるものさえある(ことに、ナイト乗務に対する控訴人らの嫌悪感を示すような発言においてその傾向が著しい。)。
原判決の個別認定は、すべて被控訴人ら提出の右陳述書の記載をそのまま採用したものにほかならないが、「申請状況」には記載がなく、陳述書だけに記載のある事実は、結局のところ本訴になってから後の平成六年ころに新たに作成されたものであって、「申請状況」に記載のない事実は、これらの発言が実際には行われていないことを意味するものにほかならない。したがって、一方において控訴人ら作成の陳述書が平成八年に作成されたとしてその信用性を問題にするのであれば、これら被控訴人ら提出の陳述書についても、「申請状況」に記載のない状況については、事情は同じである。
被控訴人ら提出の陳述書の内容をすべて信用性ありとして、これと相いれない控訴人ら作成の陳述書の記載を排斥することは、証拠の採否を誤ったものである。
(五) 控訴人らによる本件年休指定の合理性・適法性
以上のとおり、控訴人らによる本件年休指定は、嫌悪感からのナイト乗務拒否を目的として行われたものではない。
控訴人らは、本件年休指定日以外の他のナイト乗務指定日には乗務している者も多く、さらには、ナイト乗務指定日以外にも年次休暇をとっている者も多いのであって、ことさらにナイト乗務日のみに時季指定を行っているものでもない。控訴人らの中には、年末年始にかけての纏まった休みの一貫として時季指定を行っている者も多い。
また、通常乗務の日とナイト乗務指定日とでは後者の方が年次休暇を有効に活用できるので、同じ年次休暇をとるならばナイト乗務指定日にするのは労働者にとって最も合理的なことである。このことは、月曜日に年次休暇の時季指定を行うことにより日曜日に続けて纏まった休みを活用するという場合と何ら異ならない。
このような合理的な年次休暇権行使を権利濫用ということは到底できず、その適法性を否定することはできない。
第三 証拠
証拠の関係は、原審及び当審記録中の証拠目録に記載のとおりであるから、これを引用する。
第四 争点に対する判断
争点に対する判断は、次の一のとおり訂正し、二のとおり当審における控訴人らの主張に対する判断を付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の「第三 争点に対する判断」のとおり(控訴人らの請求に関する部分に限る。)であるから、これを引用する。
一 原判決の訂正
1 原判決二〇頁九行目の「第一三号証、」の次に「第四四号証、」を加える。
2 原判決三二頁一一行目の「三月度が一〇名」の次に「、その他二名」を加える。
3 原判決三四頁九行目の「余儀なくされた。」の次に「このため、前回の増車認可時(平成二年五月)の条件を大幅に下回る稼働実績となり、次の認可更新時(平成四年六月)には、関東陸運局が被控訴人らの登録車両を認可申請よりも削減して認可するという異例の措置を受けた。」を加え、同一〇行目の「全員が日交労組所属の組合員であるため、」の次に「平成二年七月一六日から同年一二月一五日までの休暇闘争の間は」を加える。
4 原判決三八頁二行目の「一二月一八判決」を「一二月一八日判決」と改める。
5 原判決四一頁七行目の「日勤勤務に就く」を「日勤勤務に就かせる」と改める。
6 原判決四四頁一ないし二行目の「被告らを再三にわたり抗議、非難していた。」を「被控訴人らに再三にわたり抗議し、また、被控訴人らを非難していた。」と改める。
7 原判決七〇頁九ないし一〇行目にかけての「第三二ないし三七号証」を「第三二ないし三八号証」と改める。
二 当審における控訴人らの主張に対する判断
1 年次休暇の時季指定権と権利濫用について
(一) 年次休暇制度と権利濫用の法理
権利濫用の法理は、一般法理であるから、その適用される分野は何ら限定されるものではないと解されるのであって、年次有給休暇の時季指定権についてはその適用がないと解すべき根拠はない。
労基法三九条四項は、労働者の時季指定権の行使に対し、使用者が一定の要件のもとに時季変更権を行使することができる旨を定めているが、この規定は、労働者の時季指定権に対抗するための手段として、使用者に対して時季変更権を付与しているにとどまり、使用者としては、時季指定権の行使に対しては、常に時季変更権によって対抗することができるだけであるという趣旨まで含むものではないことは明らかである。
また、時季指定権についても、これが社会観念上正当とされる範囲を逸脱して行使され、権利の行使として是認することができない場合があり得るのであって、そのような権利の行使が権利の濫用として無効とされることを妨げるべき理由は見いだせない。
したがって、時季指定権についても、権利濫用の法理の適用があると解するのが相当である。
そして、時間的余裕を置かない時季指定権の行使は、権利の行使が社会的相当性を欠く一つの場合にすぎないのであって、権利濫用の法理が適用される範囲を、このような場合に限定すべき根拠はない。
(二) 特定日・特定時季についての年次休暇権行使
特定日・特定時季(たとえば、月曜日あるいは正月など)に年次休暇をとりたいというのは、その特定の日ないし時季に意味があるのであって、当該日ないし時季に就くべき業務が重要なのではない。すなわち、決して、特定の業務に着目し、これを嫌悪し、その業務への就労を拒否しようとしているのではない。
ところが、本件のナイト乗務指定日についての時季指定は、これとは異なり、その特定の日ないし時季に意味があるのではなく、まさしく当該指定日における業務に就くことを拒否することを目的とするものであるから、これらを同視する控訴人らの主張が失当であることは明らかである。
(三) 年次休暇の自由利用の原則との関係
年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である。
しかし、これは、有効な時季指定権の行使がされた場合にいい得ることであって、時季指定権の行使が権利の濫用として無効とされるときには、年次休暇の自由利用の原則が問題とされる余地はない。
もっとも、時季指定権の行使が特定業務を拒否する目的であるかどうかを判断するためには、本件における被控訴人らのように、使用者が労働者に対して年次休暇の利用目的を問いただし、労働者がこれに応じて休暇の利用目的を開示することが必要になることが想定されるから、その限度では年次休暇の自由利用の原則に対する制約となる可能性があることは否定できない。しかし、この場合における使用者の質問の目的は、当該時季指定が特定業務を拒否する目的のものであるかどうか、すなわち権利濫用に当たるものであるかどうかを確認するためのものであって、年次休暇の自由利用を制約すること自体を目的とするものではないから、これを確認するための方法が右目的を達成するために必要やむを得ないものであるならば、質問すること自体を不当とすることはできないというべきである。本件において被控訴人らが採用した方法も、必要やむを得ない限度を逸脱したものであるとは認められない。
以上のとおりであるから、年次休暇の自由利用の原則を根拠にして、時季指定権の行使については権利濫用の法理を入れる余地がない、ということはできない。
2 原判決が権利濫用の根拠とする理由について
原判決の、本件年休指定が権利濫用であるとする判示は、正当として是認することができる。
控訴人らの主張は、いずれも独自の見解であって、採用することができない。
3 ナイト乗務制度について
(一) 深夜におけるタクシー不足の解消について
控訴人らは、ナイト乗務制度は、もともと夜間におけるタクシー不足の解消の要請には応えることができない制度であり、現実にもそのような要請に何ら応えるものではなかったと、主張する。
その根拠として、控訴人らは、ナイト乗務制度の導入は、タクシー乗務員の増員を伴うものではなく、単に一乗務の昼間の運行がなくなるだけで、夜間の車両台数、運行が従来より増えることは予定されていないと主張する。
しかし、仮に夜間の車両台数、運行数は増加しないとしても、弁論の全趣旨によれば、行政当局からの強力な指導もあって、各タクシー会社とも、夜間専用車両の休車は基本的になかったので、夜間に走行するタクシー車両の台数は単純増になっていることが認められ、また、乙第二〇号証によれば、被控訴人らがナイト乗務制度を導入したのも、平成二年七月以降、夜間専用車両が一二五台増えて合計一七六台となったので、その乗務要員を確保して、これを休車させることなく一〇〇パーセント稼働させることを狙いとしたものであったことが認められる。したがって、ナイト乗務制度の導入により、少なくとも夜間に現実に運行された車両の台数は従前よりも増加することになったものと認められる。
甲第四四号証には、ナイト乗務を実施したからといって夜間に稼働する車両の数が増えるわけではない旨の記載があるが、右に認定したような事実までも否定する趣旨ではないと解される。
しかも、夜間専用車両は、指定乗り場に二回又は三回以上の計画配車をすることが義務づけられていたのであるから、この点において一般車両と大きな差異があり、夜間専用車両の運行は、深夜におけるタクシー不足の解消に役立つものであったことは明らかである。
(二) 労働時間の短縮との関係について
控訴人らも、ナイト乗務制度の導入に伴って、労働時間が短縮されたことは否定していないのであって(もっとも、乗務出番数自体は減らないので、自由になる時間は名目ほどは増えないと主張する。)、乙第二〇号証によれば、年間三二時間の労働時間の短縮となっていたことが認められる。
(三) 被控訴人らがナイト乗務制度を導入した目的
以上のとおりであるから、被控訴人らが実施したナイト乗務制度が、深夜におけるタクシー不足の解消や労働時間の短縮という社会的、政策的要請に基づくものであり、認可された夜間専用車両をすべて稼働させるため、ナイト乗務制度を実施する必要性は極めて高かった、との原判決の認定判断は、何ら誤りではない。
この制度の導入の目的が専ら被控訴人らの私的な利益の追求にあったとする控訴人らの主張は、採用することができない。
したがって、このようなナイト乗務を拒否するために行った時季指定権の行使は権利の濫用とされてもやむを得ないというべきである。
4 控訴人らの本件年次休暇権行使の目的について
(一) ナイト乗務拒否目的の判定基準
被控訴人らが、ナイト乗務拒否を目的とする休暇申請に対応するために、控訴人ら主張のような方針をとったことは、原判決の認定するとおりである。
そして、右の方針の内容に照らすと、このような方針によってナイト乗務を拒否する目的でする休暇申請であるかどうかを判断することは、不合理であるとはいえない。
控訴人らは、控訴人らとしては、年次休暇申請について理由を問うことは違法であるとの認識を持っていたし、年次休暇にナイト乗務の振り替えというような条件を付けることも不当であると認識していたから、被控訴人らのとった方針は、乗務拒否の意思の有無を判断する決め手とはならない、と主張する。しかし、控訴人らが休暇届を提出した際の各営業所次長等との応答の状況は原判決の認定するとおりであって、控訴人らが、年次休暇の理由を問うことが違法であるとか、あるいは、振り替えという条件を付けることが不当であるとか主張した事実はない。したがって、控訴人らが、当時、年次休暇の申請について、その主張するような認識を持っており、そのような認識のもとに行動していたものと認めることはできない。控訴人らの主張は、その前提を欠くものである。
(二) 控訴人らのナイト乗務の実績
控訴人らのうち一部の者が、他のナイト乗務指定日に、指定されたナイト乗務を行っている事実があるとしても、直ちに本件年休指定にナイト乗務拒否の目的がなかったということはできない。
控訴人らにナイト乗務を拒否する意思があったとしても、すべてのナイト乗務を拒否するとは限らないのであって、一部のナイト乗務だけを拒否したとしても必ずしも不自然ではない。
(三) 判定基準の適用について
控訴人らは、控訴人らに対する休暇理由の問いただしも、振り替えに応じるかどうかの確認も行っていない場合があり、被控訴人らの前記方針の適用は恣意的であったと主張する。
しかし、原判決の認定するとおり、控訴人らの多くは、ナイト乗務は行わない旨の明確な言動をとっていたのであるから、そのような場合には、さらに休暇理由を問いただしたり、振り替えに応じるかどうかを確認するまでもないのであって、これらの質問や確認をしなかった場合があることをもって、被控訴人らの方針の適用が恣意的であったということはできない。
(四) 職制らの陳述書の信用性
原判決の判断のとおり、控訴人ら作成の各陳述書に対比して、被控訴人らの各営業所の管理者が作成した陳述書は、「申請状況」に基づくものであって、その信用性は高いということができる。
「申請状況」(乙第一八号証の一、二、第三三号証及び乙第二九ないし第三二号証の各陳述書に添付されたもの)と管理者作成の陳述書(乙第二二号証、第二八ないし第三二号証)のそれぞれの内容を対比すると、その多くは、陳述書の方が質疑応答の内容等がより詳しくなっているが、両者は基本的には食い違うものではなく、「申請状況」に記載がなく陳述書だけに記載のある事実があるからといって、陳述書の当該部分が信用できないと直ちに断定することはできない(なお、乙第一七号証によれば、「申請状況」の「理由」や「質疑応答」の欄には簡潔に記入するようにとの指示がされており、記入する欄も大きくないことが認められるから、そもそも「申請状況」には詳細な記入はできなかったものと考えられる。)。
以下、控訴人らの一部について、個々に検討することにする。
(1) 控訴人吉近正之
「申請状況」(乙第三三号証)の「質疑応答」欄は、「ナイト拒否では休暇は認められない わかっています」というのであり、陳述書(乙第二八号証)は、「この日はナイトじゃないか。ナイト拒否では休暇は認められないぞ。第一、出番表を掲示した後に言ってきてもダメだよ。」「分かっているよ。それでいいよ。」というのであって、おおむね同旨であることは明らかである。
(2) 控訴人森英希
「申請状況」(乙第三三号証)の「質疑応答」欄は、一二月一〇日の休暇の受付日の状況を記載したものであって、「ナイト拒否では休暇は認められない 無言」というものであるが、陳述書(乙第二八号証)には、一二月一〇日には、休暇闘争なので欠勤になる旨伝えたところ、何ら抗議する様子もなく無言でその場を立ち去ったとあり、何ら食い違いはない。右陳述書には、一二月一五日の応答として、「もうストライキは終わったんだから今度のナイトは乗るんだろう?」と確認したところ、「いや、組合では乗りたくなければ乗らなくてもいいと言っている」との返事であったとあり、この応答は一二月一〇日のものではないから、一二月一〇日の状況に記載している「申請状況」と矛盾するものではない。
(3) 控訴人丹波力也
「申請状況」(乙第一八号証の一、二)の「理由」欄は、「休暇を有効に使いたい」であり、「質疑応答」欄は、「一日休めば三日休める」というものであり、そのほかに、別紙に、「乗る意思はある。一日の休暇で三日も休める、利用しない手はない」との付記がある。
陳述書(乙第二二号証)は、控訴人丹波力也が白紙の休暇申請用紙を提出したので、「氏名も日付も休暇申請日も書いていないじゃないか。一体どういうことだ。」と問いただしたところ、同控訴人は、「ナイト乗務日に休みたいので宜しく。」と言ったきりであった。次長が「こんなものでは休暇は認められないよ。」と言うと、「ナイト乗務に休暇を取れば一日の休暇で三日休める。利用しない手はないから休む。」と言って立ち去った、というのであって、「申請状況」との間に差異はない。「申請状況」の別紙には、同控訴人の「乗る意思はある」との発言が記載されているが、その趣旨、真意は明らかではなく、全体としてはナイト乗務を拒否する態度であったものと認められる。
(4) 控訴人秋山幸雄
「申請状況」(乙第二九号証に添付)の「質疑応答」の欄には、「なんだナイト日ではないか!「……」無言で立ち去る、事後休暇なのだから欠勤になるぞ、指定日変更も無視した」とある。
陳述書(乙第二九号証)には、休暇届は認められないから、乗車するよう要請したが、控訴人秋山幸雄は具体的な理由は明らかにしようとしないものの、どうしても休むと言い張り、譲らなかった、そこで別の日にナイト乗務をするという約束ができないか同控訴人の考えを尋ねたが、同控訴人は、この問いかけに答えず、黙って事務室から出ていってしまった、との記載がある。
この両者を対比すると、「申請状況」の「無言で立ち去る」との記載は、やりとりの最後の段階についての記述であって、同控訴人が終始無言であったという趣旨ではないと解される。
(5) 控訴人皆川進
「申請状況」(乙第三〇号証に添付)の「質疑応答」欄には、「ナイト乗務の為欠勤ですよ」とだけ記載されているが(これは、管理者側の発言であると解される。)、そのほかに、欄外に「乗りたくないとの返事」と記載されており、結局、陳述書(乙第三〇号証)の内容とほぼ同旨である。
(五) 控訴人らによる本件年休指定の目的
控訴人らは、本件年休指定は、ナイト乗務に対する嫌悪感からこれを拒否する目的でされたものではない、と主張する。
しかし、控訴人らに右のような目的があったとする原判決の認定判断は相当である。
ことに、原判決が認定しているように、控訴人らの所属する日交労組は、平成二年一二月一三日、中央委員会において、同月一五日をもって休暇闘争は中止するが、ナイト乗務の反対と時短分の賃金補償を求める闘いは継続していく旨を決定し、同月一五日付けの組合機関紙「やくしん」に、休暇闘争の経緯や右の中央委員会における決定内容のほか、「休暇戦術は中止しましたが、個人の有給休暇使用は労基法で認められた権利として自由に行使して下さい。」と掲載したのであって、これらの事実によれば、控訴人らの本件休暇指定がナイト乗務を拒否する目的のもとにされたことは明らかであるというべきである。
組合機関紙に右のような記事を掲載した趣旨について、原審証人元山光男は、組合が休暇戦術を中止すると、被控訴人らがこれに乗じて、一般の休暇の取得を含めて、休暇の取得を制限してくることを心配したからである、と証言している。しかし、同証言によれば、被控訴人らにおいては、本件の問題が生じるまでは、従業員の年次休暇の申請が認められず、休暇の取得ができなかったということは全くなかったことが認められるから、組合が、休暇闘争の中止以後、一般の休暇の取得が被控訴人らによって制限されるのではないかという危惧を抱いたというのは、信用することができない。組合がこの時期にことさらこのような記事を掲載したのは、個人の有給休暇使用は労基法で認められた権利として自由に使用することができるという至極当然の事柄を念のために周知させたというのではなく、ナイト乗務日に年次休暇の時季指定をすることを暗にすすめたものであると認められる。
そして、控訴人森英希、同浅利豪及び同皆川進の場合は、いずれも日交労組が休暇闘争中に年次有給休暇の時季指定権を行使したものであるうえ、これが休暇闘争が中止された後も撤回されないままで、組合の機関誌にも前記のような記事が掲載され、休暇闘争の中止後においてもナイト乗務の指定日に年次有給休暇の時季指定をするよう、いわば組合による勧奨があったといわざるを得ない状況の中にあって、引き続きナイト乗務は拒否するという意図を明らかにしていたものである。したがって、その時季指定権の行使は、ナイト乗務を拒否する目的であったと認められる。
控訴人吉近正之、同丹波力也、同北川美好、同髙須貫治、同上沢正律、同内田正、同五十嵐政美、同小川章夫、同橋場武、同滝沢時男、同秋山幸雄、同大澤正春及び同川原武彦の場合も、休暇闘争に接着した時期に年次有給休暇の時季指定権を行使し、その際に引き続きナイト乗務を拒否する意図を示したものであるから、いずれも、やはりナイト乗務を拒否する目的の時季指定権の行使であるというべきである。
さらに、控訴人清水満及び同佐々木亨の場合は、休暇闘争に極めて接着した時期に年次有給休暇の時季指定権を行使し、ナイト乗務日の指定の繰り延べを受けたのに、その繰り延べられたナイト乗務日についても年次有給休暇の時季指定権を行使し、その際に引き続きナイト乗務を拒否する意図を示していたものであるから、これまたナイト乗務を拒否する目的の時季指定権の行使であることは明らかである。
そうすると、控訴人らの時季指定権の行使は、いずれも権利の濫用であるというべきであり、無効である。
第五 結論
以上のとおりであるから、原判決は相当であり、本件控訴及び当審において拡張された請求はいずれも理由がないから棄却し、控訴費用は控訴人らに負担させることとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官矢崎秀一 裁判官西田美昭 裁判官榮春彦)